報道では決して伝わらない人々の声が
突き刺さる——–。
『フタバから遠く離れて 第二部』は、福島第一原発事故により避難を強いられている、福島県双葉町を追ったドキュメンタリー映画『フタバから遠く離れて』の続編である。
長い避難生活で町民の間に不満が多く出はじめた双葉町の避難所や仮設住宅では、町議会と町長が対立。2013年2月に井戸川克隆町長(当時)が辞任に追い込まれた。町長選挙を避難先で行うという異常事態。異なる町政方針を打ち出した伊澤史朗氏が当選、役場は福島県いわき市に再移転した。
町長交代により揺れ動く双葉町は帰宅困難区域に指定され、さらには中間貯蔵施設の建設計画が出されるなど、事故に起因する様々な問題が大きな影を落としてゆく。
歴史に翻弄された土地、そこで暮らしてきた人々の立場を克明に映し出し、目に見えないものが消失していく様と、原発行政がもたらした矛盾を描く。
2011年3月12日。
双葉町民は1号機の水素爆発を耳にし『死の灰』を被った。町は全面立入禁止となり、1400人が埼玉の高校へ避難。地域社会丸ごと移転したこの高校は、まさに現代のノアの方舟と化した。
双葉町長井戸川は、財政破綻した町を救うため7・8号機を誘致した原発推進派だったが、町民が被爆し、事故が長期化するにつれ、その信念が変化してゆく。
原発により1960年代以降経済的繁栄が約束されてきた場所・双葉町。町民は、いまだ奪われた家・土地・財産の補償を受けずに、5年以上とも言われる避難生活を続けている。
先進国日本の片隅で忘れ去られて行く人々。高校の教室に畳を敷き、10~20人で寝食を共にする共同生活。先の見えない待つだけの避難所の時間をカメラは9ヶ月にわたり記録した。
日本の原子力政策の成れの果てがここに凝縮されている。
1マイクロ(Sv/h)に「おっ」と言っていた自分が、230という尋常じゃない数字を見てビックリしても、その後5とか6とか数字を見ると、一瞬に慣れてしまう。
頭の理解だから実感が伴わない。
それを生で味わった。
双葉町役場は緊急事態の最前線。
3.11から原発・避難の状況を刻々と記した記録・・・これは何物にもかえられない歴史的真実の現場。
1974年大阪生まれ.映画作家.
東京大学卒業後,ニューヨークで映画製作を学ぶ.
処女作の16ミリ作品『echoes』(2001)がアノネー国際映画祭で審査員特別賞・観客賞を受賞.
第二作『Big River』(2006)はベルリン国際映画祭.釜 山国際映画祭等でプレミア上映された。
2005年にはアルツハイマー病に関するドキュメンタリーで米テリー賞を受賞。
2012年「フタバから遠く離れて」で、初めてドキュメンタリー映画を監督。ベルリン国際映画祭でワールドプレミアされ、音楽を担当した坂本龍一とともに登壇。世界に向け原発事故の窮状を訴えた。世界40カ国以上で公開され、2012年度キネマ旬報文化映画第7位。
同名著作 『フタバから遠く離れて』(岩波書店)も出版。同スピンオフ作品「放射能 Radioactive」は、 仏Signes de Nuit国際映画祭でエドワード・スノーデン賞を受賞。
2013年春、劇映画『桜並木の満開の下に』(主演は臼田あさ美、三浦貴大、高橋洋)では被災地を舞台に物語を展開し、ジャンルを越えて、震災以降の社会をいかに生きるかという問題にアプローチしている。
近作 には他に、小津安二郎監督のドキュメンタリー「小津安二郎・没後50年 隠された視線」 (NHKで放映)、「フタバから遠く離れて 第二部」など。
現在、新作「道頓堀よ、泣かせてくれ! DOCUMENTARY OF NMB48」(2016)が劇場公開中。
2001 「echoes」
2006 「BIG RIVER」
2009 「谷中暮色 (Deep in the Valley)」
2012 「フタバから遠く離れて(Nuclear Nation)」
2013 「桜並木の満開の下に」
2014 「フタバから遠く離れて 第二部」
2016 「道頓堀よ、泣かせてくれ! DOCUMENTARY OF NMB48」